スキルミスマッチだった…を防ぐ、SES導入前のチェックリスト
エンジニアキャリア 2025.07.17

SES(システムエンジニアリングサービス)でプログラマー、エンジニアをチームに入れたものの、「思っていたスキルと違った…」といったミスマッチが発生することがあります。本記事では、スキルミスマッチを防ぎ、プロジェクトを成功へ導くための具体的なチェックリストを紹介します。
なぜスキルミスマッチは起こるのか?
「開発現場の負担を減らすためにSESを導入したはずなのに、逆に工数が増えた…」
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。プロジェクトに必要なスキルや経験を持った人材を確保したつもりでも、現場に入ってみるとミスマッチが発生するケースは少なくありません。
スキルミスマッチは、SES導入時のよくある落とし穴です。しかし、事前にポイントを押さえておくことで、多くのミスは回避できます。
本記事では、SES導入時にありがちなミスマッチの原因を紐解きながら、導入前にチェックすべき項目をご紹介します。エンジニア不足に悩む企業様が、失敗なくSESを活用するためのヒントになれば幸いです。
スキルミスマッチのよくあるパターンとは
SESを導入しても、「想定よりもパフォーマンスが出ない」「想定した役割をこなしてくれない」という課題は後を絶ちません。特に、以下のようなパターンは頻出です。
専門技術に乏しい人材が配属される
一見「Java経験3年」などの条件を満たしていても、実際には対象のフレームワークやライブラリの使用経験が浅く、実務で期待されるスピードや質に達していないケースがあります。
たとえば、プロジェクトでSpring Bootを使用しているのに対し、配属された人材はJavaの基礎的なWebアプリケーションの経験しかなく、Spring特有のDIやControllerの設計に苦戦するといったことが起こります。
また、フロントエンドの領域でも同様です。Vue.js経験ありとされていても、Options APIしか触ったことがなく、Composition APIベースのコードに対応できない、という事態も少なくありません。
このようなスキルの「表記上の一致」と「実務レベルでの習熟度」の差は、現場の教育コストを増やし、SES導入の本来の目的を損なう原因になります。
上流工程への理解が弱い
もう一つのミスマッチのパターンは、「要件定義や基本設計もお願いしたい」と考えていたのに、実際にアサインされた人材は開発やテストが中心で、上流経験がほとんどなかったというケースです。
上流工程への対応が可能かどうかは、実は技術スキルとは別の領域でもあります。業務理解力、ドキュメント作成力、関係者との調整力など、よりビジネス寄りの経験を持っているかどうかを見極めることが必要です。
自走力が不足している
自分で判断して動くというより、指示待ちでないと動けないタイプのエンジニアが来てしまい、現場リーダーの負荷が増加するパターンです。
企業側としては、メンバーとしてだけでなくリーダー的な役割も期待していたのに、SESエンジニア本人は「言われたことを実装するのが得意」というスタンスで動いてしまい、求めていた提案力や設計力とのギャップが露呈するのです。
SES導入前に確認しておくべき5つの視点
SESをうまく活用するためには、以下の5つの観点で準備を整えることが重要です。
1.プロジェクトの要件整理ができているか?
2.必要なスキル・経験が明確になっているか?
3.現場の受け入れ体制は整っているか?
4.候補者との面談で確認すべき項目を明文化しているか?
5.契約内容・稼働期間などに誤解がないか?
ここからは、各チェックポイントについて詳しく見ていきましょう。
チェックリスト①:プロジェクトの要件整理
SESの人材を迎えるにあたり、まず必要なのは「プロジェクトの全体像をきちんと伝えられる状態」にしておくことです。
なぜ要件整理が重要なのか?
パートナー企業やエンジニアに「何をしてもらいたいのか」が明確でないと、適切なスキルを持った人材を選定できません。
特に重要なのは以下の情報です。
・プロジェクトの目的
・使用する技術スタック(言語、FW、DBなど)
・開発体制(アジャイル/ウォーターフォール)
・担当してもらいたい工程(設計~実装~テストなど)
・想定される課題や制約事項
情報が曖昧だと起きること
たとえば、「Java経験あり」とされる人材がアサインされたものの、実際にはSpring Boot経験がなく、立ち上がりに時間がかかるケースはよくあります。また、「設計から入ってもらえる人が欲しい」と考えていたのに、実際には実装メインの方がアサインされてしまうと、現場に負担がかかってしまいます。
こうしたミスマッチは、事前の要件整理と共有不足から生まれるのです。
対策方法
プロジェクト概要資料を1ページでもよいので作成し、共有しましょう。そこに、必要スキルや業務内容の記載があると、パートナー企業側もマッチングしやすくなります。
チェックリスト②:求めるスキルセットの明文化
「Javaが使える人」「Web系が得意な人」といった曖昧な表現では、希望するスキルを正しく伝えることができません。どのようなスキルを、どのレベルで、どんな業務に使ってもらいたいのかを、具体的に定義することが重要です。
必要なスキルは「具体的に」伝える
例えば以下のように具体的に伝えると良いでしょう。
・Java(Spring BootでのAPI開発経験3年以上)
・Vue.js(Options API→Composition APIへの移行経験があると望ましい)
・AWS(EC2、S3、RDSの基本操作レベル)
・コミュニケーション能力(Slackでの非同期連携に慣れている)
NGなスキル要件の書き方
よくあるNGパターンとして、「経験豊富な方」や「コミュ力の高い方」など抽象的な表現が使われるケースがあります。しかしこれでは、パートナー企業側も判断基準を持てません。結果として、現場と合わない人材が紹介されることになりかねないのです。
チェックリスト③:現場の受け入れ体制の整備
どれだけ優秀なエンジニアがアサインされても、受け入れ体制が整っていなければ実力を発揮できません。「すぐに働ける状態」を整えることも発注側の重要な役割です。
よくある受け入れ体制の不備
・初日に開発環境のセットアップができない
・ツールへのアクセス権限の申請が遅れる
・質問できる担当者が不在
・ドキュメントが整備されていないため、自己学習に時間がかかる
これらの状況は、オンボーディングにおいてつまずきの原因となり、SESメンバーだけでなく既存メンバーの工数を圧迫することにもつながります。
事前に整えておきたいこと
以下のような準備をしておくとスムーズです。
・開発環境の構築マニュアルの整備
・権限申請フローの明確化(GitHub/Slack/Backlogなど)
・導入時のオンボーディング資料やドキュメントの用意
・メンター的なサポート担当者の割り当て(可能であれば)
「自走できる人材だから何もしなくても大丈夫」ではなく、「自走しやすい環境」を作ることが重要です。こうした準備があるだけで、SESメンバーの立ち上がりスピードが格段に上がり、全体のパフォーマンス向上にもつながります。
チェックリスト④:スキル確認面談のポイント
SESのミスマッチは、「面談の質」次第で大きく変わります。特に、実務経験が豊富な人材であっても、プロジェクトとの相性や動き方が合っていないと、スムーズな立ち上がりは期待できません。そのため、ただ形式的にスキルを聞くだけでなく、実際の業務にどう対応できそうかを見極める視点が大切です。
面談で確認すべきポイント
面談では、以下のような観点で質問を用意しておくと、単なる「経歴確認」では見えてこないリアルなスキル感や適応力を把握できます。
・これまでのプロジェクト経験と自らの役割
→ 実際にどんなシステムでどんな業務を担っていたか、深掘りします。
・使用技術の深さ(実務年数/案件数)
→ 表面的な経験ではなく、どのくらいの規模・難易度で使用してきたのかを聞き出します。
・チームでの開発経験・コミュニケーション手法
→ 完全リモートか対面か、スクラム開発の経験有無なども確認しましょう。
・自走力・主体性があるかの確認
→ 例えば「問題が起きたとき、どう動きましたか?」といった行動質問が有効です。
・報連相やコミュニケーションスタイル
→ Slack・Zoomなど、利用しているツールとの相性も見るべきポイントです。
このような観点を中心に、SESメンバーが自社のプロジェクトでどのように活躍できるかを、面談段階でイメージできるようにすることが理想です。
面談のコツ
一方的に質問するのではなく、プロジェクトの状況や背景を伝えたうえで「こういう場面でどう動きますか?」と聞くスタイルが効果的です。また、技術的なスキルだけでなく、現場適応力や思考の柔軟さも見ることが重要です。
チェックリスト⑤:契約形態とアサイン期間のすり合わせ
スキルマッチと同じくらい重要なのが、「契約内容」と「アサイン期間」の認識のズレです。
よくあるトラブル例
契約周りの認識齟齬として、以下のようなパターンがあります。
・短期のつもりで依頼したのに、長期前提の人材がアサインされてしまう
・稼働日数・時間の想定が双方で異なる
・契約更新や終了のタイミングに認識の齟齬がある
このようなトラブルは、「事前のすり合わせ」が徹底されていればほとんど防げるものです。
対策方法
こうした問題を防ぐためには、次の点を意識して事前に確認・合意しておくことが大切です。
・業務範囲、業務時間、契約期間は書面だけでなく口頭でも丁寧に確認
・最初の契約は短期(1〜3ヶ月)で様子を見る形もおすすめ
・延長/終了の判断基準を事前に共有しておくと、後のトラブル回避につながります
このように、契約面についても「スキルマッチだけでなく、条件マッチ」を意識することで、後からの不信感やトラブルを大きく減らすことができます。
情報共有とパートナー企業との連携の重要性
スキルミスマッチを防ぐうえで、パートナー企業との連携は“事前”が命です。
以下のような情報共有ができていれば、ミスマッチの確率は大きく下がります。
・プロジェクトの全体概要と目的
・担当業務の範囲
・必須/歓迎スキル
・チーム構成と開発スタイル
・想定される課題や制約条件
・求める人物像(性格・動き方など)
パートナー企業を発注先ではなく、一緒に成功を目指す仲間”として接することが大切です。きちんと向き合うことで、よりマッチした人材提案を受けられるようになります。
まとめ
SES導入で「スキルミスマッチだった…」という失敗をしないためには、導入前の準備と情報共有がすべてです。
振り返りとして、以下のチェックリストを確認しましょう。
・プロジェクトの要件をきちんと整理したか?
・求めるスキルを具体的に伝えられるか?
・現場の受け入れ体制を整えているか?
・面談で適切に人材を見極められているか?
・契約内容の認識はパートナーと一致しているか?
これらを丁寧に行えば、SESはとても有効なリソース戦略になります。エンジニア不足に悩む企業こそ、SESを「正しく活用」することで開発スピードも質も劇的に改善されるでしょう。
自社の開発体制をより強固にするためにも、今回のチェックリストを参考にしてみてください。
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Q&A
エンジニアのスキルはどうやって具体的に確認すればいいですか?
経歴書の確認だけでなく、面談時に「何をしたか」ではなく、「どのように対応したか」など行動ベースで質問しましょう。
プロジェクトの技術要件をどう整理して共有すればいい?
「プロジェクト概要資料」を作るのがおすすめです。目的、技術スタック、開発体制、担当フェーズなどを明記すると、パートナー企業も適切な人材を提案しやすくなります。
面談では企業側から何を話せばいいですか?
プロジェクトの背景、目指すゴール、現在の課題などを率直に伝えると、候補者の理解が深まります。候補者にとっても「現場での働き方」が想像しやすくなり、ミスマッチの防止につながります。
受け入れ体制の整備で気をつけるべきポイントは?
環境構築マニュアル、ツールのアクセス権限、相談できるメンター役の設定などが重要です。立ち上がり時の対応がスムーズであるほど、SESエンジニアは早くパフォーマンスを発揮できます。
スキル要件の伝え方が難しいのですが、どうすればいい?
「やってほしい業務」を起点に考えると整理しやすくなります。たとえば「API開発を任せたい」→「Spring Bootの経験が必要」という形で、必要なスキルが自然に見えてきます。
初めてSESを導入するのですが、不安です。
まずは信頼できるSESパートナー企業としっかりと情報共有を行い、小さなプロジェクトからスタートすると良いでしょう。実績が積み上がれば、徐々に安心して任せられるようになります。
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